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秒速5センチメートル、再び(第一話)
 
もう一度大きなスクリーンで観た『秒速5センチメートル』は、新しい発見に満ちていました。
何度見てもその時の自分によってそれぞれ思うところがあって、何度も何度もたくさん考えて、そして最後に希望がある、素敵な映画だと思いました。


第一話、この段階では気づかなかったのですが、アカリとタカキの間には一話のラストでもう三話につながる差が生まれていたように思います。


第一話で描かれるのは『子供の無力さ』です。
周囲からのからかい、大人の都合による転校、会いに行くために必要なお金と時間、そして電車の時刻、無慈悲な天候不順。痛いほどの空腹に、冬風にさらわれて飛んでいくアカリへの手紙。それらは子供であるタカキにはどうしようもないことばかりです。心細さとみじめさに泣きそうになりながらも、歯を食いしばっているタカキを動かしているのはたった一つの原動力、「アカリに会いたい」ということだけでした。
もしかしたら、アカリに会う事ができれば、このみじめさも、無力さも、全部帳けしになるくらい自分を信じられるのではないかと思ったのかもしれません。
実際にアカリに会えた時、二人は泣きだしてしまいますが、それは今まで無力な自分たちが、無慈悲な現実に対してあがいてあがいて、それがやっとむくわれた瞬間でもあったからでしょう。


そうしてキスを交わす二人。
そこで感じたのは、『心とか魂とかそういうものがどこにあるのか』『13年間生きてきた人生の全てを分かち合う瞬間』でした。これを一言で言いかえてしまうと、『真実』とか『現実』とか、そういうものになるような気がします。


人と人とが触れ合ううちに、『魂の交感』がおこる奇跡的な瞬間、というのは確かに存在します。
なにもかもを分かち合えて、分かりあえたような、たった一瞬だけれども世界の全てと相手の全てを感じ取れるような、強烈な『実感』の体験です。
その『実感』によって鮮烈に触れたのは何か、というと、それは他でもない、『世界』そのもの。


今までぼんやりとタカキが感じてきた、世界の大きさ、世間というもの、あらゆる無慈悲さ、これからの人生の長さ、そして信じられないくらい広くて複雑で無慈悲な世界の中にたった一人ぽつんと存在する、自分と彼女の存在。それらを、彼はあのキスの瞬間に感じ取ったのではないかと思います。そして、それはアカリも同じだったのではないでしょうか。


以前秒速はイニシエーションの映画だと書きましたが、三話の時のみながらず、ここでもタカキはイニシエーションを体験しているのではないかと思います。そしてアカリも。
『あのキスの前と後とでは、世界は決定的に変わってしまっていた』。それは彼らが一つだけ、世界を知って次の大人の段階に進んだからです。


彼らが知ったのは世界の広大さと、己の無力さでした。


そこでタカキとアカリに決定的な差が出ます。
茫漠な人生、気が遠くなるほどの長い時間、広すぎる世界、その前には自分たちがずっと一緒にいられるなんて無邪気に信じていられたあの頃のようにはいられない。きっともうずっと一緒にいることはできない。
それでも、


「タカキくんは大丈夫、これからもきっと大丈夫」


そう言えるアカリはタカキとは決定的に違います。
なぜなら、アカリ自身が大丈夫だと信じられるからこそ、タカキにそう声をかけられたのだと思うからです。世界の無慈悲を痛感し、自分は無力だけれども、それでも彼女はあのキスによって希望を感じ、自分の力を信じて、きっと大丈夫だ、と思ったのではないでしょうか。自分も、そして彼も、これから先もずっと大丈夫だと。


彼女が手紙を渡さなかったのは、それが『子供の自分』が書いた手紙だからです。
あの時渡すべきは、イニシエーションを終えて大人になったアカリからの言葉だったのでしょう。だからこそ、彼女は「手紙書くよ、それから、メールも」と言うタカキに対してこういうのです。「あなたはきっと大丈夫」だと。


一方でタカキは、電車に乗りながらこう考えます。
『彼女を守れる力が欲しい』
彼のイニシエーションはまだ完全に完了してはいなかったように感じました。
アカリが「世界は無慈悲で自分は無力だが、それでもきっと大丈夫」と感じたのに対し、タカキは「無慈悲な世界に対して、長すぎる子供時代に対して、いつか力を手に入れれば、その時にきっと希望があるのではないか」と考えているように思いました。


世界を知り、己を知り、そして生きていくための希望を持つのがイニシエーションだとするのならば、タカキのイニシエーションは最後の一つが欠落したままだったように思います。
それがここから先の彼の歪みを産みだしていった原因なのではないでしょうか。

 
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【2014/08/03 07:24】 | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0)
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