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言の葉の庭
 
言の葉の庭は、秒速5センチメートルに比べるとシンプルでわかりやすい作品です。
この作品では、雨と靴が非常に印象的に描かれています。


雨は現実じゃない、今のここじゃない世界に自分をつれていってくれるものとして。
靴は、現実を歩いて行くための力として。


自分の作った靴であるくタカオは、自分の力で人生を生きていきたい、早く大人になりたい、と思っているように感じました。一方、いつもヒールのパンプスを履いて、それを半脱ぎでぶらぶらさせているユキノは、『大人と言う靴』を履いて頑張って歩いていたけれど、それを脱いでしまいたい、と思っているように思えます。もう歩きたくない、大人として生きていくのに疲れた、と言う風に。


雨の中で出会った彼らは、お互いにお互いを必要としていました。
タカオは、無力な学生である現実から、雨の非現実の中で解放されました。『なんだかよくわからない世界の秘密=大人世界の象徴』のようなものを持った大人の女性が、自分に対等に接してくれる。そのことも、タカオを何かから解き放ってくれる一因なのでした。
ユキノは、打ちのめされた無力な自分、無慈悲な現実から、雨の間だけは解放されることができました。誰も自分を知らないところに行って、なんのしがらみもなく、自由に笑ったり話したりできました。


けれどユキノはわかっていたのでしょう、また現実に戻らなければならない、ということに。
「ねえ。私、このままでいいのかな」という言葉や、「歩く練習をしていたの」という言葉には、再び現実の世界で生きていくことへの義務感を感じられます。どんなに現実が非常でも、歩けなくなってしまっても、一度非現実で癒されて、それでも現実に帰るのだという意志が彼女にはあります。自立した大人の女性ならではでしょうか。


一方のタカオは、まだ子供です。
秒速のタカキよりは相当大人びて見えますが、『世界の秘密』を信じている辺り、やっぱり子供だなと思いました。ただ彼は『世界の秘密=生きるための力』を手にするために、非常に現実的な手順を践んでいます。バイトをしてお金をため、家では練習して腕を磨き、専門学校へ行く。ロマンとセンチメントの世界で漠然とメールを打っていたタカキくんよりはかなり大人です。


それでもやっぱり、彼は子供です。
自分の無力さをはがゆく感じ、子供=学生でいたくないと、雨の日の午前は学校をさぼって、学生じゃない、靴職人志望の自分になりに公園へ向かいます。そうすることで、学生でいる間に感じる強烈な焦燥感や無力感から解放されていたのかもしれません。そこで出会った大人の女の人が、自分と普通に接してくれる。大人のように扱ってくれる。更には、「歩けなくなった」と自分を頼ってくれた。彼女を歩かせるための靴を作れば、大人に近付けるかもしれない。彼もまた、この非現実な時間を必要としていたのでしょう。歩くための練習として。


そんなわりと大人な二人の魂が触れ合う瞬間が、映画のラストシーンです。
タカキとアカリのキスや、カナエが見たロケットと同じような体験なのでしょう。世界の秘密だと思っていた女性は、ただの現実に傷付き、歩けなくなった大人だった。そのことにタカオは気が付いた。そして、彼女が言っていた「歩くための練習」というのを二人ともが行っていたということにも気付いたのでしょう。


だから、彼らにとって重要なのはあの魂の交感があった一瞬のみであり、その後はそれぞれの人生を生きていったのではないでしょうか。もちろん、再会があったかもしれませんが、それはもう人生を生きる覚悟を持った大人と大人の新しい出会いであり、あの雨の日にお互いを慰め合っていた二人はどこにもいません。
あの東屋でのような関係性に二人がなることは、もうないのではないか、と思いました。


だからこそ、愛よりも前の、孤哀の物語だったのではないかな、と。

 
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【2014/08/03 08:29】 | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0)
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